神の帳は、「生きている者がどのような因果の道筋を歩み、どこへ向かっているのか」を示すために、 世界因果が清書した“表の記録”である。帳は死者の履歴を残さない。人は死んだ瞬間、帳からその名を消される。 だから帳に残る線は、常に“いま死に向かっている生者”だけで構成される。
帳には、世界因果の内部でどんな補修があったかまでは書かれない。 系譜のすり替え、断絶、隠された血脈といった“裏側の工程”は省かれ、 いま成立している一筋の線だけが記される。 だから帳は、あくまで「現在進行中の因果の地図」であり、過去の履歴書ではない。
澪が視る帳は「生きている者が死へ向かう道筋」を示すものであり、死者の記録ではない。 飴色・菫色などの異常な色は帳の内側ではなく、その外側――世界因果の縫い目に生じる濁りであり、 ひかりと澪が追うべき“危険な死の流れ”を示している。