世界の因果律
世界の根幹にある法則は、ひとつしかない。
――存在が先、血は後。
ある生命が「世界にすでに存在している」場合、 その存在を成り立たせるための血脈は、後から必ず補修される。
因果律の図解
過去に介入して世界線を乱す行為。
矛盾を検知し、どの事実を優先するか判定する層。
すでに「ここにいる」生命そのもの。
誰かが過去に遡って、自分の父親を殺すなど、 本来とは異なる行為を行い、時間線に矛盾を生じさせる。
世界因果は、「すでに世界に存在している生命」を優先する。 父が変わろうと、その子どもが「いる」という事実のほうが重い。
因果律は、父Aの代わりに父Bなど別の血脈を選び、 「この子が生まれる経路」を別ルートから繋ぎ直す。
補修後の世界では、子どもは自然に「別の父」の子として生まれている。 本人も周囲も、それを疑問に思わない。ただ、世界の深層には縫い目が残る。
タイムパラドックスの解
たとえば、誰かが過去に遡って自分の父親を殺したとしても、 「その子」は消えない。
世界は“その存在を存続させるための新しい血脈”を、 別の線から補い、繋ぎ直す。
血は存在の後から決まる。 これが世界因果による“補修”なのである。
……ここだけを聞くと、「何を勝手なことを言っているんだ」と読者は感じるかもしれない。 だが、同じ仕組みは、実は歴史のほうでは当たり前のように起きている。
ある歴史的事件がおきるとき、それを実行するはずだった当事者Aが、 事故や病などで実行できなくなったとしよう。 そのとき、その歴史的事件そのものが「起きなかったこと」になるのかと言えば、 そうはならない。別の人物Bが引き継ぎ、形を変えながらも、 ほぼ同じ出来事が結局は起きてしまうことが多い。
世界にとって重要なのは、「AがやったかBがやったか」ではなく、 「その出来事が歴史の中に存在すること」のほうである。 父親を過去で殺しても子どもが消えない、というタイムパラドックスの解は、 この歴史の構造を“血脈”に適用しただけの話だ。
すでに生まれてしまった存在Xを守るために、 世界因果は父Aの代わりに父Bを繋ぎ、 「Xが生まれる流れ」を別ルートから補修する。 その補修点が、世界の深層に残るのである。