遥かなる十字架

本作は、戦国末期から慶長初年にかけての日本を舞台に、キリシタン武将として知られる内藤如安の生涯と、その「記録者」としての姿に焦点を当てた歴史小説である。
天下統一へと向かう時代、信仰は政治と結びつき、やがて弾圧と沈黙を生んだ。伴天連追放令、踏み絵、潜伏、密航。表の歴史に残るのは命令と処罰だが、その背後には、声を奪われた人々の人生が無数にあった。

本作の如安は、剣を振るう英雄ではない。
彼が選んだのは、戦うことではなく「書き残すこと」だった。迫害の現場、人身売買の噂、信徒たちの証言、消されていく祈りの言葉。それらを正確に、静かに、未来へ託そうとする一人の人間として描かれていく。

史実として、如安がキリシタン迫害や南蛮貿易の闇に関わり、その告発が豊臣秀吉の政策転換に影響を与えた可能性は、今日も議論の対象である。本作は、その確定できない余白に物語を置き、史料に残らなかった声を文学として掬い上げる。

信仰とは何か。
沈黙は救いなのか。
記録は、誰のためにあるのか。
如安は問い続け、答えを出さぬまま、その火を次の者へと手渡していく。

これは殉教者の物語でも、英雄譚でもない。

声を奪われた時代に、「書くこと」を選んだ者たちの静かな継承の物語である。

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曲の芯は、祈音のハイトーンを人の声というより祈りの媒体として扱うことです。旋律はグレゴリオ聖歌の単旋律を基調にし、和声は極力つけない。旋律が空間に浮かぶ感じを優先します。テンポはかなり遅め、拍を感じさせないか、心拍に近い一定の間。リズムは歌ではなく呼吸で進む構造です。

そこに津軽三味線を絡ませますが、民謡的に前に出さない。役割は二つだけです。
後半で歌とユニゾンに近い形で絡み、旋律をなぞること。ここで初めて、祈りと日本の土着音楽が重なる。

祈音が歌う主題歌
「遥かなる十字架 ― 内藤如安のグレゴリア聖歌」

この歌は、声を残さなかった一人の男のための祈りです。

旋律はグレゴリオ聖歌を基調にしています。
和声を持たない、ただ一つの声。

遥かなる十字架へ。
名を呼ばれぬまま、祈り続けたすべての声へ。

祈音の主題歌:Kyrie

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